ネムノキの花

チャリで、ペデストリアンを走っていた。

ペデストリアンは、歩行者と自転車のための専用道路で、筑波研究学園都市を特徴づけるひとつだ。
自動車と分離して安全に行き来できるよう、やや高いところに作られている。
だから、筑波研究学園都市の初期の頃の建物は、2階に入口があったりする。
そして、台地上の平地林を切り開いた都市の真ん中を背骨のように貫いているペデの両脇に、都市建設以前の雑木林がひっそりと残る。

ネムノキの花は梅雨を楽しませてくれる

ネムノキの花は梅雨を楽しませてくれる

梅雨の中休みで快晴。爽やかにペダルをこいでいると、ぼぉっと薄く掃いたようなピンクが目にとまった。

明るい日差しと対照的に、こじんまりとした闇に、あえかに灯るような印象。
ネムノキに花が数輪咲き始めていた。

チャリを歩道の脇に止めて、近づいた。

長いまつげのような花をつんと上に向け、感じることができないほどの風に揺れている。
花はまだ一輪、二輪で、よく見ると枝先につぼみが結構な数ある。

ネムノキは、まめ科。同じまめ科のフジなどと同じく、細長い楕円の小さな葉が歯ブラシのように規則的に並んでいる。
植物学的に言えば「羽状複葉」の「互生」。

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ネムノキのネムは「眠る」からという。江戸の俳諧では「ねぶ」とも。
夕方に葉が少し閉じ、眠ったようになるからという説もある。

漢字で書けば「合歓」。
梅雨に入ると間もなく、雑木林の縁に枝を広げ、花を咲かす。
同じ頃に咲くクリが、甘く強い香りを漂わせるのに比べ、ネムノキは小さな扇子のようなピンクの花が印象に残る。
クリの香り対してネムノキの彩り。
なんとなく、か弱いイメージの花は「ねむ」という響きにふさわしい。
ただ、花をよく見ると、つんつんした感じで、優しさから遠くなる。
ぼぉと少し離れたところで、木全体を眺めた方が風情がでる。
花どうしがささやき合っているかのようだ。
だから、合歓なのだと、意識したときに浮かんだのが次の句だった。

合歓の花大樹とあれば響き合ふ

ざぁーと通り雨があった。すぐに止む気配で、急ぎ足で通り過ぎるひともちらほら。
そんなペデのかたわらに一本のネムノキ、それは傘を広げているようだった。

一本の傘開くごと合歓の花

梅雨を楽しませてくれる木だ。

俳句・文=野末たく二

桜川畔のネムノキの花

桜川畔のネムノキの花

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