気象庁「異常気象レポート2014」が告げるもの

気象庁が平成27(2015)年3月20日に、「異常気象レポート2014」を発表した。
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新聞をはじめ、マスメディアは私の知る範囲ではあまり話題にしなかったように思う。
せいぜい「今紀末に日本の平均気温3.5℃上昇」というベタ組みの記事を目にしたくらい。

たぶん、私も『ストーム・チェイサー-夢と嵐を追い求めて』という新刊を編集していなかったら、
軽くスルーしていたかもしれない。

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「異常」「気象」という語の連想から、ストーム・チェイサー、青木豊*の鬼気迫る写真がふと目に浮かび、何が異常なのだろう? と内容が気になり、読んでみることにした。
そして、じっくり読んでみて、これは大変なことが書いてあると知った。

青木豊=日本で初めてのストーム・チェイサー。雷、スーパーセルなどの局地的な激しい気象現象を写真や動画で表現し、発信している。茨城県筑西市在住。

以下、「大変なこと」と感じたいくつかをまとめた。


大変だからといって、恐怖に陥れるつもりなどまったくない。
気象の専門家でないので、レポートの細部の読み解き方を間違えているかもしれない。
できれば、気象庁のレポートそのものを、ご自身で読んで、判断いただきたい。
まずは自分たちの置かれた現状を冷静に判断するための、そのためのきっかけづくりになればというのが狙いだ。

1「レポート」の位置づけ
気象庁が「異常気象レポート」を公にしたのは、前回が平成17(2005)年。
つまり、今回の異常気象レポートは10年振りになる。
そして、昭和49(1974)年から数えて今回が8回目。
実に、40年以上前から異常気象について、パブリックなコメントが出ていたとは知らなかった。

まず「異常気象」は、以下のように定義される。

「一般に気象や気候がその平均的状態から大きくずれて、その地点/地域、時期(週、月、季節等)として出現度数が小さく平常的には現れない現象または状態」で、「30年に1 回以下の出現率の現象」。

分かりやすく言えば、「めったにない」気象現象の「めった」は、30年に1度の規模ということ。
「異常気象レポート2014」は、「本篇」は253ページにも及ぶ。
この「本篇」を読み込むのはとても大変だ。
本篇をコンパクトにまとめた「概要編」が別にある。
読んだのは、主に「概要編」で、34ページなので読む気になれば1日あれば読める(でも専門用語や図の読み解きが正直結構大変)。
コンパクトな分、背後にどんなデータがあるのか知りたくなった場合のみ、「本篇」を読んだ。
※以下「異常気象レポート2014」はたんにレポートと省略。

ちなみに、気象庁のホームページでPDF形式のデータがだれでもダウンロードできる。
もちろん無料。

「異常気象レポート2014」の副題は、「近年における世界の異常気象と気候変動 ~その実態と見通し」。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)など国際的な地球温暖化防止政策を調整する機関の調査報告書や提言など様々な気象に関する国際機関のデータを基に、地球レベルで進行している世界の異常気象への現状を広く国民に知らしめるのがレポートの狙いだ。

このレポートの重要な点は、気象庁という日本のパブリックな機関が出したということではないかと思う。

民間機関でなく、日本の気象に関する研究機関であり、時に、気象に関する基本的な政策を提言できる公的機関がまとめた点に、レポートの重要性はある。

たとえば、気象庁が定義する気象用語に、メディア(とくに映像メディア)や一部民間気象会社が使っている「ゲリラ豪雨」や「爆弾低気圧」ということば(概念)を気象庁は使わない。
偏見や暴力を助長するおそれのある語を使うことで、誤解が生じる。
気象庁はパブリックな気象に関する機関として、そして何より科学的な研究機関として余分な誤解を与える用語は排除する姿勢を貫いている。

その気象に関するパブリックな機関のコメントとして、レポートの冒頭に以下の文言が出てくる。

平成17(2005)年までの状況を報告した前回の異常気象レポート以降、世界各地で多数の人的被害をもたらす気象災害が発生しました。この間、日本においても顕著な大雨・大雪そして熱波・寒波が発生しており、「異常気象」という語からはもはや「珍しい、まれである」という印象が消えつつあります。また、近年は世界的に気温の高くなる年が頻出しており、着実に進む地球温暖化の気候に与える影響が顕在化し始めています。

これは「異常気象レポート刊行にあたって」と題して、西出則武気象庁長官が述べている文章で、表紙をめくって最初に出てくる。

私たち市民が、「なんだか近頃気象が異常だよね」というのとはレベルが違う。
日本の、気象庁が、その冒頭で30年に1度起こり得るような「異常気象」について、「『珍しい、まれである』という印象が消えつつある」、と述べているのだ!
あくまでも「印象」という点で、一線を踏み外してはいない。
ただ、「気候変動に関する自然科学的根拠を正しく理解することが極めて重要」と釘を刺しながらも、気象庁長官のメッセージとして、正直これはエライことだと思った。
何気なくぱらぱらめくるのでなく、マーカーを片手に読まねばと心した。

2-1「異常気象レポート2014」の概要編の概要

「異常気象レポート2014」の「概要編」は、2章立てだ。

1章は、「異常気象と気候変動の実態」。
2章は、「異常気象と気候変動の将来の見通し」

これまでの異常気象の歴史を振り返り、その事実に基づいて、科学的視点に立ち将来を予測している。

ちなみに、多くのメディアが取り上げたのは、2章の日本に関する「21 世紀末(2076~2095 年)における、日本の年平均気温は、現在気候(1980~1999 年)を基準として全国平均で2.5~3.5℃の上昇が予測される」という将来見通しだった。

実際に、平均気温で3.5℃上がるということは、大変なことだ。
そのこと自体は記事に値すると思うのだが、ただどのような事実が積み重なって、「いま」がこうなってしまったのか、その「いま」にいたる事実を抜きにして、いきなり「将来」とを言われても、なかなかイメージしづらい。

イメージできないということは、平均気温3.5℃上がることが、何か他人事に思えてしまう。
レポートを読んでいくと、ここ数年起きている気象災害の数々は決して他人事でなく、自分たちが選択して暮らしてきたツケが「いま」の異常気象につながっていたんだとイメージできる。
そこで初めて「将来」の見通しを読めば、まだまだ遅くないから、何かを始めないとという気にさせられる。
それが、レポートの狙いなのだが、まず何が大変か、イメージできることがとても重要だ。
それは政府が言ってるからとか、地球が大変だからというような他人事でなく、身に迫った自分のコトガラ、我が身の「いま」の問題として。

2-2日本の気象の実態の概要

以下、レポートの概要編の実態と見通しの中から、
身に詰まされる身近な日本の事例のホンの一例を紹介する。

  •  最近9年間(2005~2013年)の日本の気温は、夏と秋に異常高温が多く出現した。

これに関連したグラフが、以下。

気温(夏日、猛暑日)2000~2013年

対象エリアは東京都で、コンクリートやビルの照り返しによる「ヒートアイランド現象」が加わっていることが考えられるが、グラフは以下を示している。

  • 1日の最高気温が35℃を超えた日数、つまり「猛暑日」
  • 1日の最低気温が25℃を超えた日数、つまり日中はもちろん夜も気温が下がらない
    「熱帯夜」だった日。
  • 折れ線グラフは、熱中症で運ばれた患者数。

明らかに平成22(2010)年を境に、夏の異常な暑さが、常態化していることが分かる。
ちなみに、2010年は日本の年平均気温が歴代4位となった年だ。

夏の暑さが注目され始めたのは、2007年8月16日に最高気温40℃を超えたあたりからだ。この日、埼玉県熊谷市や岐阜県多治見市で40.9℃を記録した。
最高気温の更新は実に最高気温を74年振りということで話題になり、熊谷市の駅前は夏の異常高温のときには必ずといっていいほど登場する暑さの名所(?)になりつつある。
最近では2013年8月12日に高知県四万十市で40.1℃が観測された。

夏の暑さで、思い出すのが平成23(2011)年だ。
3月11日に発生した東日本大震災に続いて、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、電力がかなり不足することが予想された年だ。
この年の夏は、全国上げて節電、省エネルギーに取り組んみ、熱中症対策グッズとして、さまざまな物が売上を伸ばした。
駅やスーパーやビル内の電灯の何割かが消えたためにやたら暗かった。電球もLEDの時代へと進んでいった。

最近の夏の異常高温は、生活実感としてあり、グラフはそれを裏付けるものだ。
もう一つここで重要なのは、7月~8月の夏本番だけでなく、その前後。つまり春の終わりと、秋の初め、ときに秋の終わりまで暑さが続くという点だ。
「夏が長くて、いきなり冬」は、日本の四季という気候概念すら変えつつある。
それがあながち間違いでないということを示したのが次のデータだ。

  • 最近9年間(2005~2013年)に発生した主な気象災害は7月から10月に発生

レポートで、9年間の気象災害をまとめた2つの表がある。
「最近9年間の主な気象災害の被害状況」(表S1.1)と「最近9年間の主な気象災害の気象の記録」(表S1.2)だ。

気象庁が2つの表を作成するにあたり、基準にした気象災害の規模は、死者10人以上か気象庁が命名した豪雨。
ちなみに、2013年までなので、平成26(2014)年8月20日の死者74名を出した8月20日の豪雨による広島市の土砂災害はここに含まれていない。
2014年は、死者こそ1名で済んだものの7月9日の長野県南木曽町の土砂災害など、豪雨などの気象災害は頻発した(火山災害だった御嶽山噴火まで含めると2014年は災害のイメージが強い1年だった)。

2つの表の要点をまとめたのが以下。

気象災害の発生一覧

さらに、発生年と要因を箇条書きにすると以下となる。

2005年9月3日~8日        台風14号
2006年7月15日~24日    梅雨前線(平成18年7月豪雨)
2006年9月15~20日         台風13号
2006年10月4~9日           低気圧
2008年8月26~31日         低気圧、前線(平成20年8月末豪雨)
2009年7月19~26日         梅雨前線(平成21年7月中国・九州北部豪雨)
2009年7月19~26日         台風9号
2010年7月10~16日         梅雨前線
2011年7月27~30日         停滞前線(平成23年7月新潟・福島豪雨)
2011年8月30~9月5日    台風12号
2011年9月15~22日         台風15号
2012年7月11~14日         梅雨前線(平成24年7月九州北部豪雨)
2013年10月14~16日       台風26号

9年間の気象災害の主な原因となった気象現象は
・梅雨前線
・停滞前線
・台風
ということになるだろうか。

2つの表のなかから以下は、気象災害の発生した時期を縦軸にとり、1日あたりの総雨量で最大値を横軸に取った図だ。とくに総雨量600mmを超えるものを赤で示した。

気象災害の発生月と総雨量

先に「夏と秋の異常高温」について述べたが、梅雨時となる7月から秋の台風シーズン終了の10月まで列島は暑さと気象災害で抜き差しならない状況にあることを如実に示している。
そして、「秋がなくていきなり冬」という生活実感を裏付けている。

台風で気象災害が発生するのは分かる。
梅雨末期の豪雨での災害も過去にも例があるので理解できる。
上記で、注目したいのは、2008年8月26~31日の「平成20年8月末豪雨」だ。
その要因は、「低気圧、前線」となっている。
このときの状況が、気象庁のホームページに公開されている。その概要が以下。

8月26日に、前線を伴った低気圧が東シナ海を東に進み九州南部に接近した。これに伴い、27日にかけては西日本の太平洋側を中心に南から暖かく湿った空気が流れ込み大雨となった。また、この低気圧が日本の南海上に進んだ8月28日から31日にかけては、本州付近に停滞した前線に向かって南から非常に湿った空気の流れ込みが強まり、大気の状態が不安定となって、東海、関東、中国および東北地方などで記録的な豪雨となった。

8月末の雨というと、少し早い秋雨前線のようにも思えるが、実際は弱い雨がじとじと長く続くというような情緒的な降り方でない。
愛知県岡崎市で29日の1時間雨量が観測史上1 位を更新する146.5mmに達するなど、1 時間雨量の記録を更新した地点が20か所を超え、各地で局地的な短時間の非常に激しい雨が降った。以下がその時の天気図だ。

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すでに述べたように、気象庁は、「爆弾低気圧」や「ゲリラ豪雨」という語は使っていないが、
2008年の「平成20年8月末豪雨」はまさに「ゲリラ豪雨」で、下から吹き出す水でマンホールの蓋が飛んだり、道路や鉄道の下をくぐる地下道で車が浸水したりなどの被害が各地で発生した。
この年以降、「ゲリラ豪雨」は広く一般的になり、その年の新語・流行語大賞になっている。

  • いつ起こるか分からない「極端現象」

気象庁の「異常気象レポート2014」は、「異常気象」と合わせ、「極端現象(extreme event)」という語を使っている。
これは局所的に生じる「極端な高温や低温や強い雨など、特定の指標を超える現象」で、「大雨や熱波、干ばつなど」で、「異常気象が30 年に1 回以下のかなり稀な現象」であるのに対し、極端現象は「日降水量100mm 以上の大雨など毎年起こるような、比較的頻繁に起こる現象まで含む」。おそらく、「ゲリラ豪雨」や「爆弾低気圧」により生じる気象現象も「極端現象」だろう。

日降水量100mmを超える豪雨をはじめとした「極端現象」が、ここ10年間の日本の異常気象の気象現象の中で目立っている。

下の図はレポートの最近9年間の主な気象災害の2つの表から、時間降雨量の多い地点を落とし込んだもので、とくに時間100mm以上は赤くした。

気象災害の発生場所と1時間雨量

通常時間あたり80mmを超えると「息苦しくなるような圧迫感があり、恐怖すら感じる」というのが気象庁の基準だ。
また時間降雨量50mm以上となると「傘がまったく役に立たなくなる」「水しぶきであたり一面が白っぽくなり、視界が悪くなる」ので「車の運転は危険」だ。
時間降雨量100mm超えがいかに想像を絶するかが分かると思う。

2-3日本の気象の将来見通し

抜き差しならない現状に対し、レポートは将来をどう予測しているのだろうか?
日本の気象について、主なものを列挙してみよう(予測はいずれも地球温暖化予測情報第8巻による)。

  • 日本の平均気温は、21 世紀末(2076~2095 年)は、現在気候(1980~1999 年)を基準として全国平均で2.5~3.5℃の上昇
  • 日本の降水量は、全国平均で年降水量は約100mm 増加する
  • 短い時間に降る大雨(時間降雨量50mm以上)や強雨についても増加する
  • 無降水日(日降水量1mm未満)も増加
  • 極端現象は、異常高温や大雨の頻度が世界や日本で増加する
  • 日本の季節は、梅雨明けが遅くなる、やませが出現する季節が遅くなる

まさに、実態はより深刻なるという予測だ。
巻頭言にあった「異常気象はもはやまれとはいえない」状況が、日常茶飯事になるということ。
レポートの将来予測をどう受けとたらいいのだろうか?

3最後に

異常気象の背後にあるのが、地球温暖化だ。で、温暖化のメカニズムとは?
いまさらながらの感があるが、レポートに沿って、改めておさらいをしてみよう。

地球は太陽の熱エネルギーを受け、水蒸気が発生し、雲になったり、雨が降ったり、川や海に流れ込む。
太陽の熱エネルギーは、地球の外へ逃げるものもあるが、二酸化炭素などのいわゆる「温暖化ガス」があると、外に出ないで、地球の内部に熱がたまってしまう。この熱による平均気温の上昇が地球温暖化だ。

温暖化ガスは、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素など6種類が知られている。
そのなかで二酸化炭素の影響力が最も高く、その素となる二酸化炭素は、かつて地上にあった植物などで、現在は石炭や石油となって地下深く眠っている。
植物は有機物、つまりCが結びついた化学組成からなり、そのCが燃焼により酸素O2つと結びつくことで二酸化炭素(CO2)が発生する。
自動車を走らせたり、電気を起こすために石炭や石油をエネルギーとして使うことで、地球温暖化は進む。これが、おおよその地球温暖化のメカニズムだ。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の地球温暖化のシナリオは、温暖化防止策をどの程度実施するかにより、いくつかの段階事により示されている。
たとえば、発電エネルギーを二酸化炭素の排出が少ない原子力エネルギーなら温暖化は食い止められる。
日本は、その意味で、原子力発電を基本となる電力源、
「ベース電源」と位置づけている。

2011年の3月の東京電力福島原子力発電所の事故で、原発に頼ることがいかに危険か、そのリスクの大きさを目の当たりにした。しかし、原発を動かさないで、化石燃料に頼る火力や石炭発電に依存すると、地球温暖化は進行する。
決め手として上げられるのは、再生可能エネルギーだ。ただ、安定供給や買取価格などのコスト面で課題が挙げられている。
このジレンマをどう解決するか?
国レベルの政策の前に、自分の足元を見つめて。何ができるかイメージしてみよう。

2011年3月の原発事故の時、節電を訴えるニュースを見ていて、ふと感じた。
ニュースを告げるこうこうと照らされたスタジオの電力って、どのくらいなのだろう? と。
そう感じた時、節電に協力を呼び掛けるニュースの重大さが薄ぺっらに思えたのを覚えている。

以上は、個人が「異常気象レポート2014」のポイントをまとめたものだ。
最初に述べたように、気象庁のレポートそのものを、ご自身で読んで、判断いただきたい。
まずは自分たちの置かれた現状を冷静に判断するために。
当然、別の視点からの読み解きも可能だし、その上で、省エネルギーなどひとりひとりが考えるこことから始めることが大切だと思う。

電気、ガソリン、水、空気、太陽エネルギー……、身の回りにある生きていく上で必要としている資源をどのくらいのコストで使っているのか?
そのコストが地球という閉じられた惑星の系にどのように影響しているのか。
それをイメージしながら、暮らしを少しずつ変えて行く。
それが宇宙船地船という船に乗り込んだひとりひとりの役割のような気がする。
むろん、それを押しつけようとは思わない。

結エディット 野末たく二

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